top of page

 -Requiem for Chantclare -

19世紀イギリス、ロンドン。上流階級の華々しい世界とわずかな距離を隔てて、著しい貧困が存在していた。悪臭の漂う貧困層のスラム街、『イーストエンド』。その貧困だけではなく、放置する社会、そして切り裂きジャックと呼ばれる謎の殺人鬼による連続娼婦殺害事件。貧困を自己責任とする考え方があり、困窮した人びとの暮らしは放置されていた。この問題に立ち上がったのは一人の若き記者のアーノルド=ロマノフ。表向きは記者を名乗るが、彼の本職はその生まれ持った高い霊媒能力を使い猟奇事件を解決する、法王庁に仕える密偵であった。

彼がロンドンを訪れた目的は、国内有数の資産家でもあり、歌劇団を経営し多くの芸術家を育てる事でも有名なフレデリク=シャンテクレール家への訪問である。劇団の構成員は全てシャンテクレールが引き取った養子であり、全国の孤児院から集められていた。

アーノルドの妹・エカテリーナ(キティー)もまた、史学を学ぶ為にシャンテクレール家に下宿している一人である。およそ数年越しに彼女に会いに来る目的と事件の調査の為に屋敷を訪れたアーノルドであったが、使用人の男達に盗人だと勘違いされてしまい暴行の末に地下牢へと監禁されてしまう。無人の筈の地下室で、アーノルドはふと寂しげな歌声を耳にする。その声に導かれるよう、彼が手を差し伸べた先で触れたのは消え入りそうな程に儚げな雰囲気を纏う一人の少年であった。

 

    “ 闇と共に生きる者、

闇の扉を開く者。

​二人の出会いは、悲劇の始まり。”

bottom of page