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――アポカリ本編を書いててしんどかったシーンは?

黒井 : インテグラルでもそうなんですが、『スクールカースト』的なものを書くのがなぜか私は非常に好きです。学校生活における勝ち組とか負け組とか、そういうのってやっぱりどこの学校でもあったじゃないですか。思春期に感じた「あー、こういうのあったあった」っていうのを思い出しながら書くのが大好きなんですけど

七瀬 : 女子の陰湿さとか異様に再現率高いですよね。自分もあの空間にいたんだなあ、よく通えたよなあ、あんな場所にって感慨深くなりますし、ウワ~ッ! となってまともに目が当てられない時あります。あの本人に聞こえるか聞こえないかくらいの音量でヒソヒソしていたり、変なタイミングでキャハハ! って笑ったりとか、巧妙すぎて。

前田 : あ! ちょっとどうしてもいいたい事あるんで一ついいですか

黒井 : 何ですか。一つと言わず二つでも三つでも

前田 : 黒井さんの長編デビュー作でもある『エレウシスの出血』、があるじゃないですか。実はその時代から読んでる古参なんですけど、どうしてあれ読んでない人多いんですかねえ!? ナイトメアの原点ですし、知らないなんて言おうものならもう失格! やり直し! って感じですよ

黒井 : 突然スイッチが入ったな! どうしたの!?

前田 : 隊長とミツヒロ君の出会いを知らないって人が多すぎて驚いて! 自分が古株になったなって驚いたのもあるんですが、あれはもう読んだ方がインテグラルでのおじさんと隊長の邂逅から決着のシーン絶対鳥肌もんですって。ミツヒロ君が何であんなにルーシー様を神格化してるのかも理解できるし。エレウシスは始まりで、インテグラルが終焉なんだな、って全て一つに集約された感があって、あそこで本当に涙ちょちょぎれたんですよ。泣く場面じゃないですけども

黒井 : けど、私自身一気に読者が増えたのはナイトメアのお陰だと思いますけどね。それで、隊長とミツヒロ君の関係性に惚れたら是非読んでほしいかなーって。損はしないと思うんで。有料ですが

前田 : もっと知ってほしいって事と、勿体ないなあって思うんですよ。自分的にはエレウシス読んでから、インテグラルの方を楽しんでほしい。何より隊長の“本当の正体”も出てきますしね。

……で、何で突然こんな事言い出したかっていうと、エレウシスもそういうシーン(※陰湿な場面)メタクソ多かったですよね。冒頭は視覚的なグロシーンがバンバン出てきて、次第にその痛点が精神へと切り替わるというか。

痛みによる贖罪と救済と、そしてこれは母性が話のテーマなのだな? って。

エッチなBLを読むぞ~うへへ~って眉毛を抜きながらスマホを片手にカチカチしてた時に出会ったのが黒井さんのサイトで、エレウシスで、シコる気満々でビンビンにおっきしていた心のちんこシナシナになったんですよ。あの衝撃は本当に未だに忘れられない

黒井 : 冒頭からプェ(下唇噛みつつ)ニスを千切るシーンですから、そりゃあ萎えますわな。
ある意味ではナイトメアシリーズよりゲロゲログログログロテスクなんで、ナイトメア的な男と男のぶつかり合い! 拳銃でドンパチ! を、期待した人には外れるかも。もうちょっとだけ在庫あるから、興味があったら是非買ってね。商魂を忘れない私

七瀬 : でも間違いなく黒井さんの原点やなと思います

 


黒井 : また話が大きくそれましたが、しんどかったシーンですね。

黒井にとっては新条君という存在そのものが色んな意味でしんどかったですね。あのぐずぐずの内面は書いててきつかった。楽しくもあったけど

七瀬 : あれは読んでる方はもっとグサっときましたよ。彼のあの行動や心理は、一般的常識ならば醜いと思うでしょう。けど、妙に納得の行く状況描写と文章で書かれているのと、非常に情けないんですが自分は「ああ……けど何かちょっと分かるよその気持ち……」と感じてしまいました。で、そんな自分に堪らなく嫌悪しちゃうんですが、きっとここが罠だなと

黒井 : 新条君はイケメンで読者モデルなんてみんなが羨むような事をしていて、友達も多くて、
可愛い彼女もいて、毎日セックスしたい放題で、学生生活どころか人生の勝ち組でもあるんですね。けど、彼は異常に冷めていて、彼女に対しても友人に対しても家族に対しても情を持っていない。全てを持っていながら何に対しても熱を持てなくて、つーか私がゾンビだったら真っ先に食い殺しちゃってるかもしれない。後ろからガバッて。多分

七瀬 : まあそれを言うと柏木君もそういうところあるんですけどね。表面上はうまくやってるけど実は人一倍冷めてたり、何かに対してそんなに熱中できない。新条と違って、彼は熱くなっている人を馬鹿にしたりはしないけど

黒井 : そこは大人ですからね。彼らに比べると、学校生活においてはイケてないとされる冴えない男子の七瀬も前田も、それぞれ情熱を注げるものが存在していて強い人間なのだろうなと思います

七瀬 : フェリーの中で七瀬が言った「助けられる人は助けながら進む」という台詞に、新条は「自分は何もない」という現実に打ちのめされるんですよね。この時はまだ、彼は人間関係においての優劣にこだわっているのですが、後々に前田によって吐かれた「いいんだよ」の台詞で、ああ、やっと彼は救われたのね……って思いました。ん? これって七瀬と前田が話してるって設定なのに固有名詞出しまくって大丈夫?

前田 : 多分今更かと​

 

 

黒井でも、それは大人になって学校という一種小さな王国のようなあの場から抜けた今の私だからこそ思うのであって当時の自分は新条のようになりたいと感じるのであろうなー

七瀬 : ちなみに自分が読んでてきつかったのは、柏木君が部活の顧問にいじめられるところ。

自分が中学時代もああいう人、いたんです。相手によって態度を露骨に変える先生が。学校社会という閉鎖的なコミュニティで、絶対的権力者でもある教師と、それに従うしかない子ども達同士で格付けし合い、一人の対象を下に見て誰も助けないようなあの状況。子どもの世界では誰も救ってくれないんですよ。学校なんて場では、教師がルールだから

黒井 : 例えばですよ、例えば。スケールや倫理観が全然違うんで、ちょっとした穿った見方だと思って流して下さいね。ドラえもんの世界で、ジャイアンがのび太をいじめるのって、周りが何も言わないし、承認してるじゃないですか。あれも立派なイジメだけど、私達からすれば『またやってる』ってぐらいで終わってしまっている。ああいう感じと言えばピンとくるのかも

七瀬 : あ~。分かる。慣れてしまって何も言わなくなるんですね。で、木崎君がそれを見て逆襲するところも何気にきつかったです。あの教師も最悪なんですけど、もはやどっちが悪者なんだっていう。それでスカッとする自分にもまた嫌悪感が沸いたり

黒井 : でも強くて悪い奴って最高ですよね

七瀬 : そういえば、木崎妹こと透子ちゃんは小学生時代リカという性格の悪いメスにいじめられてる……? シーンがありましたけど、あれも兄に話せば解決したのかね~……、いや駄目だな(笑)

前田 : それで思い出したんですけど、格闘技をやってるキャラが多いせいか、アクションシーンとかも凝ってるしこだわってるんだろうなあって。これは多分、黒井さんがフルコン空手経験者だからというのもあると思うんですが

黒井 : 経験者とか言われると何だか凄い感じするけど本当に下から数えた方が早い帯色なんで、
黒帯の人や達人クラスから見れば素人同然なのがばれちゃう。
アクション的な部分は言っちゃえばエッセンスみたいなものだから、あんまリアリティさにこだわりすぎてもどうかなという部分があって……ガチにしちゃっても受けいれられないというか、とっつきにくいじゃないですか。一応BLなんで、視聴層は女性ですから余計に興味はないでしょうし。創作なので多少はファンタジーがある方がいいだろうなって思いながら書いてる事多いです。……まあファンタジーとか言って誤魔化してたりする部分もあるんですが

七瀬 : 格闘技ですけど、最近とんとテレビでやらなくなりましたねえ。ボクシングくらいですか。
スポーツやパフォーマンスとしての格闘技よりもガチの殴り合いに近い方が俄然盛り上がりますよね

黒井 : 私が小学校から中学の時はK-1黄金期でしたね~、ボブ・サップやらピーター・アーツやらミルコやらアーネスト・ホーストやら、いっぱい選手が出てた気がする。……知ってる? 南海の黒豹レイ・セフォーとか

前田 : ブーメランフックですね、何となくには知ってますよ。自分、黒井さんより年上なので。

あとがきにアンディ・フグとか出てきた時は懐かしすぎて笑いましたもん。お前ホントはいくつなんだ(笑)

七瀬 : 一応ここにいる中の人みんな女性なんですが、さっきから男子力高い会話ですね。そろそろリタイアする人多そう

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